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コンガラ譚詩

何年前のことだろうか、髄膜炎・脳梗塞・脳出血と三つの病気に短期間に立て続けに襲われ、しばらく入院していたことがある。その期間ずっと長い夢を見ていた。といっても時々途切れ、その区切りごとに拙老は転生して、新しい“自己”を生き始めるのだった。つまり、いま病院にいるのは無数の、無限回転生する“自己”の一つだった。

退院してから、昔の教え子たちに連れられて車椅子で浄瑠璃寺に行った。そこにコンガラ童子の像があって、「やっと来たか」という顔で拙老を迎えてくれた。何世紀も待たせたような気がした。

コンガラは初発(はじめ)を知らず未現(ゆくすえ)も時空の海にただよへるなり

思ひ出でよ未生以前のものごころ時空(とき)をめぐりてわれと生(あ)れにき

コンガラは人を恋ふとて億兆の時空を超えてぞ娑婆に来にける

コンガラは人恋しとて山城の瑠璃の御寺に居場所定めつ

コンガラは人里恋ひて津の国の芦屋の里に住みまぎれけり

コンガラは薬師慕ひて因陀羅(インダラ)の網のくまぐま泣いてめぐりぬ

津の国の芦屋に年を経るわれをもしコンガラと問ふ人もなし

コンガラは素性知られず明王の脇に澄まして立つてゐるなり

hiro3582.hatenablog.com/entry/2015/06/23/082353hiro3582.hatenablog.com/entry/2015/06/23 /082353 より

コンガラ童子像

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