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デモクラ雀

__整列雀火鉢雀

スズメはご存じの通りひどく警戒心が強い鳥で、庭に群がって遊んでいるのを覗いただけでもすぐパーッと飛び去ってしまう。

ガラス窓を開けるなどは論外で、ガラス越しに眺めようとちょっと動くのもダメだ。たちまち散ってしまって、しかも憎らしいことには少し離れた場所からこちらの様子を窺っている。調べて見たら、スズメの視界は340度とやたらに広く、危険と判断して飛び立つ距離は5メートルから8メートルあるのだそうだ。スズメは極度の臆病さと用心深さで可憐な命を守っているのである。

スズメたちとつきあいがはじまってからもう6年ぐらいになる。大病をした後、リビング・ルームに置いた電動ベッドからガラス戸越しに庭をぼうっと眺めていると、空っぽのプランターで2,3羽のスズメが砂遊びをしているのが眼に留まった。何やら一所懸命そうなのが気に入って、米粒を与えてみた(実際は荊妻が与えました)のが始まりだった。生米は啄んだが、いったん炊いて飯にした米にはそっぽを向いた。麦をやったら、最初は残し、こっちも意地になってそのままにしていたら二日目にやっと食べた。コシヒカリを与えたら、嬉々として口にした。セレブのスズメなのかもしれない。

つきあいが長くなるといろいろなことが分かってくる。初めのうちはほっそり痩せていたのに、この頃はまるまると肥って憎たらしいくらいだ。1年ごとに世代交替があって、親スズメが子スズメに飛び方やら餌のついばみ方を明らかに教えている。今はみんな成鳥に育ち、仲間内ではたがいに識別しているのだろうが、人間の眼にはまるで区別が付かないのは困る。みんな同じ模様で、同じ顔をしていて、同じ表情で餌を催促する。揃うといやに要求がましいのだ。

集まる数は年々増えてくる。一日に一回、決まった時間になると、まず「斥候」のスズメが姿を現し、庭木の枝に留まってじっとこちらを観察する。そしてどんな口コミをしたのか知らないが、ちゃんと連絡が取れたと見えて、所定の場所に米を蒔く時分には20羽ぐらいがフェンスの上にずらりと勢揃いして、人を見下ろしている。時には米の蒔きようが遅いとでも言いたげに、不服そうに口を尖らせてこちらを見るようになった。

この分でゆくと、スズメたちの要求はいよいよ高くなり、日に日に数は多くなりそうだ。いつかテレビで見たギリシャのデモを思い出しておかしくなった。あの時も勝手だとか注文がうるさいとかけっこう悪評もあったが、うちのデモクラ雀どもと同様、生活はそれぞれ大変なのだろうと思った。

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