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庚子新春三つ物

令和2年1月4日、拙老の鰥居かんきょに連句仲間の綺翁・熊掌・碧村三子来訪。歳旦開きの慣わしに従って 三つ物を作りましたので、ご披露します。干支は「庚子かのえね」にあたります。ネズミ年です。

鼠らが歯剥き祝ふ初日の出   桃叟

昆布巻模様裾割れの餅    綺翁

門々に萬歳まんざいの声広がりて  碧村

[評釈]  発句。現代日本語では「歯を剥く」と「牙を剥く」との区別が薄れているようですが、本当は大違いです。「牙を剥く」は、反抗する・反噬はんぜいする、刃向かう…といった意味ですが、「歯を剥く」とは、お世辞笑いをすることです。昔は、良家の子女は親から「女の子は人様に白い歯を見せちゃダメ」と教わったものでした。脇句はお正月によく見かける景物からイカガワシイ妄想を膨らませています。この作者はとかくバレ句――わからなかったらググるべし――に傾きがちですが、お正月のことですから。まあ大目に見ましょう。3句目はさすが若師匠の腕で、前句を品よくまとめています。「萬歳」は三河万歳のことで「バンザイ」ではありません。掛け合いの語句にはだいぶキワドイのがあるそうです。それが隠れた付け筋になっています。「て」止めにしているのも定石通りです。

[付つけたり] 桃叟自作。とにかく「カノトネ」が今回の戯詠の眼目ですので、この4音節の音声連続を三十一文字に読み込みます。できるだけ4つを分割せず、そっくりそのままにするのがコツです。いわば地口じぐちの原理です。

昔モテタ男に替りて 萎え侘びぬ干支一巡は夢のうちかのエネルギー今ぞ恋しき

男運の悪い女に替りて 今年こそ別れを告げんとにかくにかのエネロスの性悪な奴

[桃叟近況報告] 芳子が居なくなった後、桃叟の生活は若い友人たち――主として大学の教え子]――とご近所の方々の御助力で無事に維持されています。鰥居の日常の世話は、訪問介護センター、看護センターの皆さん(ヘルパーやトレーナー)が上手にローテーションを組んで、面倒を見てくれています。これも全部芳子が生前に用意しておいてくれたものだと思うと感無量です。

現在桃叟が棲息している圏域は、トーテミズムとアニミズムが支配する時空です。それをマンダラ図のように絵解きしてみると、このページの写真のようになります。

まん中の信楽焼のタヌキは、最近運動不足気味になった拙老の自画像です。タヌキの右肩のあたりで諸他の人形たちを見下ろす位置にいる狐は故老妻のつもり。タヌキを囲んでいる左から大きなブタ・ヒヨコ・クマ・フクロウ・キツツキの順に並んでいるフィギュアたち(差し障りがあるといけないので人名と比定せず」)は、老人介護をして下さるチームの皆さん方です。

こんな調子でこれからのアディショナルタイムを生きてゆこうと思います。 了

 

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