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鳥のあれこれ

2016-09-18 |

リハビリのために屋上に出る日が多くなったせいで、この辺に棲息する鳥たちとおつきあいする機会が増えました。芦屋の町は六甲山麓と大阪湾岸の間の狭い平地に細長く東西に伸びた地形をしています。つまり海と山の距離がたいへん短いわけで、わがマンションの上空は鳥たちにとっては恰好(かっこう)の通り道になっているようです。代る代るいくつかの種類の鳥たちとお近づきになりました。

よく眺めていると、鳥たちはめいめいに適した高度でたくみに棲み分けているのがわかります。いちばん高く暮らしていのは、夏の間ずっと、何といってもツバメでしょう。スピードが違います。たまに空中で他の鳥とすれ違っても、俺たちはおまえらとはチガウンダとでも言いたげな態度で、スイスイ飛び抜けてゆきます。時々チュッチュッと囀るだけでだいたいあまり鳴きません。お高い鳥なのです。そんじょそこらの、特急の名前にされたこともないようなフツーの鳥と一緒にしないでほしいという気持が見え見えです。

しかしツバメは意外に低いところに巣を作ります。マンションのピロティ式駐車場の天井に作った巣に、毎年のように戻って来て、賑やかに雛を育てます。気さくだというより、まったく人間を怖れないのです。日頃人間からどう扱われているかが問題なのでしょう。たとえばハトなどはひところ高層階のバルコニーに住みついて、やたらに巣を作っては嫌われていましたが、すぐに追っ払われました。あまり人に好かれていない鳥です。

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      親鳥の留守の巣

巣を作るといえば、今週の写真(左)に撮った鳥の巣には、雛だけが写っていて親鳥の姿がありません。実をいえば、何という鳥かもわからないのです。親鳥の留守中に内緒で盗み撮りしたのです。とても警戒心が強いので、もしいたら嘴でつつかれていたかもしれません。この巣も本当は2,3年前に作られた古巣――子供が取ろうとして管理人さんに叱られていたことが拙老の記憶にあります――でして、現在の親鳥が廃物利用したものと見えます。これは地上の、一階通路脇の植え込みの物蔭にある樹木に作られたものです。その鳥はたしかヒヨドリでした。写真には不在の親鳥もたぶんそうなのだろうと思います。ちなみに、写真を撮った後、この巣からは鳥の姿が親子ともども居なくなりました。きっと危険を感じて棲む場所を変えたに違いありません。

ヒヨドリの姿は屋上では見かけませんが、名前がちょっと異なるイソヒヨドリはここの常連メンバーです。エレベーターホールのいちばん高いスペースの見えない所に巣を作っているみたいで、親子で囀り交わす美しい声が屋上じゅうに響きわたります。時々雄か雌か知りませんが、綺麗な青い羽毛をした鳥があたりを飛び回りながらいい咽喉を聞かせてくれます。あぶなっかしく羽根をバタバタさせながら隣のマンションの屋根にたどり着くのは、ついこの間まで雛だった今年の若鳥でしょう。

頻度という点では、同じようによく見かけるのがセキレイです。うちの屋上に来るのは、残念ながら色の地味なセグロセキレイらしく、特徴のある仕草で長い尾羽をヒョコヒョコさせながら、せわしなく移動します。北の方にある谷川の川原に帰る途中、羽根休めに立ち寄るだけなのでしょうか。毎度、ご滞在になる時間が短くて、すぐに居なくなってしまいます。

しかし何といっても、いつも憎たらしいほど存在感があるのはカラスです。たとえ姿が見えない時でも、必ずどこかで睨みを利かせているみたいで、カラスが近くにいる時は、上に紹介したような鳥たちは姿を見せません。カラスに逆らわないように息をひそめて隠れている気配です。しばらく無人の、ならぬ無鳥の舞台が続いた後、どこかから一声カアと響きます。「来るぞ来るぞ」と思っているうちにまず一羽が視界に現れます。たいがいは隣マンションのテレビアンテナの上に止まって、四方に呼びかけるように啼き立てます。すると方々からそれに対する応答の啼き声が帰って来るではありませんか。たまには応答ナシの日もあります。カラスは辛抱強く何度も何度も啼き続けます。声も姿もひどく孤独そうで、やっと返事が返って来るとこっちがほっとするほどです。

でも多くの場合、カラスの群れは憎らしいことの方が目立ちます。いつかなどは4,5羽のグループが集団でスズメ(?)を追っかけているのを見たことがあります。必死で高空に逃れる小さな鳥を追ってカラスも日頃そこまでは上がらない高度を無理して飛び、やがて雲にまぎれて見えなくなってしまいました。可哀想な小鳥の運命はどうなったのでしょうか。気がかりでなりません。(了) [この項はもと2016/9/18に発表したものですが、何かの都合で消えてどまったので再録しましす]

 

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