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政界くるわ言葉

国家社会の内部でのワリツケを考えた場合、拙老のような人種はどのあたりに居場所を見つけたらよいのでしょうか。初めから「君」でないことは分かっていますから「民」であるのは確かですが、問題はどの部類の「民」であるかです。

「民」にもいろいろな種類があります。市民・人民・庶民・平民などというのはいかにもワザとらしいし、富民であるわけはないし、良民になるのは願い下げですし、細民・貧民というほどは落魄(らくはく)していませんし、まだ姦民といわれるほどのワルじゃありません。遊民といったら明治時代の有閑階級みたいですし、せいぜい逸民と自称するくらいが身分相応なところでしょう。

江戸時代の逸民は政治というものに概して無関心でした。よっぽどの事がない限り、ただ無視しておけばよかったのです。当時はもちろん「政治家」なんて言葉はなく、もっぱらオカミと呼び慣わしていましたが、ともかく日頃はできれば敬して(?)遠ざけておいて、なるべく接触せずにいるのがベストでした。そうするのが権威筋との賢明なつきあい方だったのです。その筋からあまり睨まれないように首をすくめていようという生活の知恵です。

その代わり、オカミがしくじると大喜びします。さまざまな滑稽(こっけい)文芸でエサにします。その際は徹底的な非情さが特徴です。戯画化されるオカミの面々には一かけらの同情も示しません。民衆特有の冷酷さといえます。その最たるものは、何といっても、安政7年(1860――この年はすぐ改元されて万延元年になります)3月3日、桜田門外のテロで横死した井伊掃部頭(いいかもんのかみ)直弼(なおすけ)について出回った一口咄(ひとくちばなし)のブラックジョークでしょう。

「御家来の者、お着きがないゆえ、お駕篭の戸を開いて見て  コリャ胴じゃ」(『側面観幕末史』)

世に出回ったのは一口噺だけではありません。狂歌あり、川柳あり、謡曲や浄瑠璃、その頃の流行唄の替歌あり、数え歌あり、今世紀盛行のラップを早くも先取りしているチョンガレありといった具合で、当時の文芸諸ジャンルのパロディが総動員されている感があります。今日、読者の皆さんにご紹介しようと思いますのは、それらの中でちょっとエロいやつです。「里ことば」「花街言葉」「世相わるくち」「ねやのむつごと」などといろいろな呼び名がありますが、要するに、色里で遊女と嫖客が交わすきわどいトークの形で世相を抉ってみようという趣向です。このアイデアを現代日本に生かしたら、以下のような調子になるのではないのでしょうか。なお、女郎衆が客にいう詞(ことば)の数々は、『東西紀聞』『甲子雑録』『春の紅葉』などから厳選したものです。

♀おまへ一人いいよ          安倍首相

♀もつと深くお突きなんし       安倍昭恵

♀おだましでないよ          管官房長官

♀コレ何をして居るのだえ                   金田法相

♀オヤオヤまた出したよ           松野文科相

♀きついことでおすよ            篭池元理事長

♀たいそうに出したねへ        同姓同名

 

 

 

 

 

 

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