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『鳥羽伏見の戦い』テレビ放映のお知らせ

来たる12月30日(土)の21:00~23:00に、NHKBSプレミアム「決戦!鳥羽伏見の戦い ~日本の未来を決めた80時間~」(仮)が放映されます。ディレクターによると、「鳥羽伏見の戦場の取材や資料に基づくドキュメンタリーパートとドラマによる番組構成」とのことですが、2時間たっぷり時間をかけてNHK独自の取材力を発揮したダイナミックな番組になるだろうと楽しみです。ドラマのパートには半田健人さん・宍戸開さんなどの俳優陣が出演されるすで大いに期待されます。

番組の土台になっている鳥羽伏見の一戦の評価や位置づけは、拙著『鳥羽伏見の戦い――幕府の命運を決した4日間』(2010)をだいぶ参考にしていただいたそうです。有難いことです。拙老があの本でいちばん力を入れたのは、何はさておき、戦闘現場で当時最新式だった元込銃が使用されていた事実の文献的確証を提出することでした。その証跡を『慶明雑録』という薩摩側の記録からやっと掘り出したのです。なぜその事実にこだわるかといえば、従来、鳥羽伏見での旧幕府軍の敗因は、徳川方が近代兵器を持っていなかったからだ、徳川は亡ぶべき封建的反動勢力だったから敗北は「必然」だったという《神話》が作り上げられ、それがいつのまにか「常識」化されているからです。

ここに掲げた一枚の絵は、やはり薩摩側が描いたものですが、淀川堤を敗走する旧幕伝習歩兵をスケッチしたものです。軍帽をかぶり、ランドセルを背負い、銃剣を担いだ歩兵が、昔ながらの笠を頭に載せた薩摩兵に追い立てられています。もちろん戦争画ですから、薩摩兵は強そうに、旧幕兵は弱く描くものと相場は決まっていますが、この画面にとらえられている銃こそ眼目の元込銃(シャスポー銃)なのです。やたらに長く見えますが、それは銃先に銃剣が取り付けられているからで、まさにその事実がこの銃は元込銃であることの動かぬ証拠です。(一斉射撃に続き、銃剣突撃に移るのが伝習歩兵の主要な戦法でした。)

この画面では戦闘現場にさりげなく本込銃が描かれていますし、『慶明雑録』では「本込」の2字がハッキリ書き込まれています。旧幕府軍の装備が遅れていたのが敗因だったとする通説は事実として否定されるのです。それにもかかわらず、歴史学界でも大河ドラマでもその俗説が再生産され続けているのが現状です。

来年2018年は、「大政奉還150年目」に当たるそうです。また来年のNHK大河ドラマは「西郷隆盛」だそうです。例によって、わが国の歴史知識が大衆小説でリードされる日々が続きますが――かつて頼山陽の『日本外史』・徳富蘇峯の『近世日本国民史』が果たしていた役割は、現在、司馬遼太郎史観が占めています――、そんな昨今に、このNHKBSプレミアムが、新鮮な歴史感覚に目覚めるキッカケになってくれることが期待されます。

明治維新を新しい目で見ることは、われわれの現代日本を見直すことです。  了

 

 

 

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