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平成丙申新春

新年おめでとうございます。

平成26年(2016)の干支は丙申(へいしん、かのえさる)です。今年はサル年だというので年賀状のデザインにお猿さんが氾濫しています。近年の日本ではもっぱら「十二支」の申に関心が向けられ、「十干」の方はさっぱりのようです。

一口に「干支」というけれども、そもそも「干支」は「十二支」と「十干」を合体させたものだそうです。「十二支」は殷の時代からあり、「十干」は戦国時代に始まると申します。農耕社会の円満な十二進法の文化に殺伐な牧畜・騎馬民族の文化――それが十進法だとまではいいませんが――が乗っかり、無理に接合したもののように思えないでもありません。そのせいか、十二支の「丙」を見ても、「申」を見ても、「丙午」(ひのえうま)の女は夫を取り殺すとか、「庚申」(こうしん、かのえさる)の夜にセックスをして生まれた子は泥棒になるとか、ろくでもない組み合わせもできます。

毎年恒例の戯詠腰折れを臆面もなく何首か。

◯ 思ひきや干支(えと)ひとめぐり過ぎ越してひのえのさるに又逢はんとは

◯ ひのえでも申でよかった午ならば残る月日をいかにかはせん

◯ 山王の桜に猿が勢揃いひのえの春を手を拍って祝(ほ)ぐ

3番目の戯詠には多少の説明がいるでしょう。この作には「本歌」があります。江戸時代に流行った地口狂歌の一つに「山王の桜に猿の三下がり合の手と手と手手と手と手」というのがあります。「三下がり」は猿が三匹ぶらさがっている場面と三味線の弾き方の名称とを懸けています。下の句の「手と手と手手と手と手」は三匹の猿が手をつなぐのだから手は六つあるという理屈ではなくて、「テトテトテテトテトテ」という口三味線の音色なのです。江戸音曲は捨てたものではありません。

百聞は一見にしかずと申しますが、この場合は「一聴」でしょう。地口狂歌の実際は落語『雑俳』(立川談志口演のもの)、音曲の方は長唄『外記猿(げきざる』の素囃子(すばやし)――長唄の詞章にはこのフレーズなし――で視聴できます。どちらもユーチューブで簡単に見られます。

本年もぜひ御贔屓に。

 

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