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『囀りに』歌仙初ウ3決定および以後の進行方針

お待たせしました。『囀りに』歌仙の初裏の3句目――「雑」の長句で恋――で、割に簡単に行くと思っていましたが、意外に難物だったようです。句案も全部で四つ寄せられました。例によって到着順に紹介します。

1 やわらに背中を推して虫の夜    三山

2 浪あらふ配所に待たむ文ひとつ   碧村

3 押しボタン流し目に見る同じ階   湖愚

4 雨宿り唇盗むつかのまを      綺翁

皆さんめいめい奮闘されています。たいへん選評しにくいのですが、まずワルクチを言いやすいのから始めます。3と4は共に直情径行タイプ、よくえば「いち早きみやび」(『伊勢物語』)、事実は、相手が誰であれ何であれ色を仕掛けるといった印象であり、こう言っちゃナンだが恋の丈がだいぶ低いんじゃないか。恋はエロばかりじゃないよ。一緒にするなと怒られるかも知れないが、お二人は唯色論monoeroticism――もちろん造語です――では桃門の双璧ならん。もっとも個体差はあるが。

これに反して1,2のお二人は教養が邪魔をして句風が丁寧すぎる。ちょっと舞台装置が整いすぎる感あり。特に今の場合、亭主としてはここでサラリと「恋離れ」をして貰いたいと思っているので、あまり重々しくならないようにしたいのです。今が歌仙の途中であり、前句が「ゆで栗剥きし指の細さよ」であったことをお忘れなく。打添付うちそえづけだろうと向付むこうづけだろうと、その句意を含んで欲しいのです。1の「虫の夜」と、2の「配所」では付け筋はどうなるのでしょうか。

「囀りに」歌仙の人員構成をどうするかをずっと考えていて、一時は連衆の数を固定して n連吟――最大六吟――の方針で行くつもりでしたが、冷静かつ客観的に実働メンバーを検討すると、碧村師を除く他は(桃叟も含めて)だいたい連俳ジャンルにはシロウトで、めいめい自己流に句を作っているのが現状ですので、この際無理はやめて全員――桃叟のブログを見てくれている方々――が出放題の全員参加、つまり百人一首や柔道の試合でいう乱取り方式を取ることにしました。以後御自由に御投句下さい。

こう方針を定めたことが、実は初ウ3の選定に関係してきます。亭主桃叟はこの興行を早く満尾(完結)させるために、先を急ぐことを優先させようと思います。場を動かすには、時として「遣り句」「逃げ句」を使うことが必要になります。3の「押しボタン流し目に見る同じ階」は、その目的にピッタリなのではないか。みごとに雑だし、恋を「流し目」と卑俗化して稀釈しているから一種の向付といえなくもない。これを初ウ3に採用しましょう。以下のようになります。「囀りに」句順表12

湖愚子に一言。この「入集」は必ずしも句の出来がよいからではない。歌仙を前に進めるためのオプションです。淡彩なところが「恋離れ」に適合したことと、句主がともかくも「苦吟」するようになったことを評価したからです。くれぐれもカンチガイしないように。

次の初ウ4にも新人を期待します。熊掌子、もっと厚顔におなんなさい。「こあゆ」さん、31文字ができるんだから17字でもいけますよ。いい俳号も進呈しますよ。近々のうちに連俳と一句立ての俳句(学校教科書で教え、雑誌・新聞・テレビで流行らせているやつ)とはどう違うかを本気で考える一文を草するつもりです。  了

 

 

 

 

 

 

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