この初折表6句目(初ォ6)は特に句主(作者)を指定せず、連俳用語で「出放題」という方式の一変種の扱いで、いくつかの候補作を連衆に投句していただき、その中から一句を、僭越ながら拙老 桃叟が勝手に選び出すという風に進めようと思います。7月28日のブログで呼び掛けてから、ほぼ2週間です。寄せられた句は今回3句きりでしたが、歌仙はともかく一歩一歩進むのが身上しんしょうですから、3句だけで見切り発車することにしました。以下は各句の紹介と簡単な選評です。
① 丈の短き陸奥おくの稲刈る 三山
② 異国語通じ鰯雲見る 湖愚
③ 同封されし紅葉葉ひとつ 倉梅
三山子は拙老の早稲田時代以来の老友です。半世紀の時空を越えて馳せ参じていただきました。感謝の気持ちを込めて狂歌を一首〽老い武者は相身たがひのレアメタルこがねしろがね玉もものかは。「稲刈る」ときちんと秋の季語をいれていて文句の付けようがないのだが、難をいえば「陸奥」だ。表六句には地名を嫌うという式目を小楯に取ってこの句を落とさざるを得ず。
湖愚子は70年代の卒業生。昔から少々風狂の癖へきあり。時々ワケが分からなくなる。今回もその口で、季語を入れるのに一所懸命になりすぎ、「鰯雲」まではよかったが、句主がそれでどうするのか意味不明。Oh,oil sardin とでも秋空に叫ぶのかね?
倉梅子の「紅葉葉」は、封筒に閉じ込んだ女心の色が見えてゆかしい。そういえば拙老も昔、オルグに来ていた京都から高雄のモミジを封書に入れて東京へ送ったことがあります。この句を選ぶことにします。以下のような順序で進行します:
1 オ 発句 春 長 桃叟 囀りにわが耳籍さん老の春
2 脇 春 短 桃叟 ぬくもる潮に芽ぐむ葦牙
3 第三 春 長 桃叟 遠干潟貝掘る人はまばらにて
4 四句目 雑 短 碧村 カーブのたびに変はる字あざの名
5 月 秋 長 三山 旅せんか下の弓弦はる月つれて
6 折端 秋 短 倉梅 同封されし紅葉葉ひとつ
7 ウ 折立 秋 長
8 二句目 恋 短
9 三句目 恋 長
10 四句目 雑 短
次の公募は初ウ1(折立 )です。秋の長句です。皆さんのご投句をお待ちします。 桃叟敬白。
初裏一
酒盡きてさても夜長のプルースト 碧村
※本当は『大菩薩峠』とやりたかったのですが、いかんせん字数が。かといって、『資治通鑑』は気取りすぎですし。いささか陳腐ながらプルースト。もっとふさわしい作者があれば老師の玉斧惜しみ給はざれ。