お待たせしました。初ウ5が決定しましたのでお知らせします。4人から句案が寄せられています。前句は綺翁子の「ダイヤモンドで純情崩す」です。いつものように到着順に紹介します。
① 「おいそぎ」でくるくる回る槽の中 湖愚
② 三十路前かたき役にて返り咲き 里女
③ ガラス窓磨く心の透けるまで 三山
④ 看板は年増マダムの十八番(おはこ)ネタ 熊掌
執筆桃叟はずっと連句は単独行ではない、付句はいつも前句との――たとえどんなに気に入らず、肌合いが悪くても――共同作業なのだ、と言い続けて来ました。どんな場合でもどうにか付け筋を見つけて、強引に自分の世界に引き込めばよいのです。そこに後句の句主(作者)それぞれの持ち味が出ます。それが付け味です。前句の道具立てを生かした情景を作るのです。句主は時に情景中の人物にもなります。
そもそも今回の前句への付け筋はどんなものでしょうか? 桃叟の理解では(もちろん他の解釈もあり得ます):「誰か純情な女性がダイヤモンドの魅力に抗しきれず。ついに崩落する――物欲が色欲に優先する」というプロット(筋書)です。「恋」句には扱えますが、かなり冷たく突き放している所から「恋離れ」と見なせましょう。
さて、これを受ける4句の付け味はどうでしょうか? まず①です。洗濯機の水槽の写生と見えます。しかし前句とのつながりが不明です。連句として発想されているかどうかも疑問です。③は、「ガラス窓」を磨く動作を介して透けるようにする(1)心の持ち主は、もしかしたら、前句のダイヤモンドで崩された女性と同一人物かも知れませんが、三山子がそこまで深読みしているとは思えません。あるいは三山子はまったく別箇のシチュエーションを想定しているとも考えられますが、いずれにせよわがプロットからは外れるので採りません。悪しからず。
②と④ではどちらを採るべきか悩みます。②の「かたき役」として返り咲いた人物(女優?)は、一度ダイヤモンドによろめいた過去を持つ女だったという物語が影絵のように浮かんで来ます。しかし連想にワンクッション飛躍があるのが難のような気がします。④の方はもっと直叙的に落魄らくはくの女の情景をつかんでいます。昔手に入れたダイヤ もたぶん開店費用で使い果たし、今は老人客ばかりが常連になっているようなうらぶれたスナックバーのマダムの姿です。なれの果てといってもよろしい。あるいは別人かも知れません。前句と後句との間に介在する時間の隔たりが観音開きのリスクを救っています。
どちらにしようかと迷いますが、この歌仙では連衆の数を増やしたいというアドヴァンスを取って、熊掌子の④を採用しようと思います。これが捌きの決定です。
「囀りに」句順表 72ebf088e08b6530969491f8d01587ad 次は初ウ6の雑の短句です。熊掌子を加えて連衆の数は8人になりましたので、次回からは二度目の人のも採用します。「恋離れ」をしているので次句は雑という他には何の制約もありません。御投句をお待ちします。 畢
投句します。
作者としては、前句の気配を引きずって新たな句境を展開しているつもりなのですが。
「娘横向き無言の化粧」