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今年もヒガンバナ健在 付癸卯秋四首

 

 

 

 

 

〽許せかし名もなき草と呼びたれどほんとはわれが名を知らぬだけ

〽未練なと笑ひ召さるな八十路坂道に眼留むる花のいろいろ

〽老いらくの果てに迎えるトリレンマよだれと呂律紙おむつなり

〽煉獄の暑熱をくぐる曼珠沙華燃ゆる炎も涼しげに咲く

*     *     *     *

今年の夏はいやに長く、また異様に暑かった。庭の小動物や植物たちにも異変が続々。蝉は鳴かず、蚊は飛ばず、バラは半ば枯れ、ほぼ全滅かと思っていたが、さすがにヒガンバナだけはその名に違わず、ちょうど秋分の日に地上に花芽を出しました。例年通りとはいきませんが、次々に花を開いてくれました。植物の生命力が気候変動に勝ったわけです。

そんなことがやたらに心嬉しく感じるのも、年齢のせいかも知れません。もうたいして寿命は残されていないから後はドウナトキャアナロタイでどうでもよいようなものの、やはり今の異常気象が一次的な変動にすぎないのか、それとも地球全体に生じている不可逆的な過程の始まりかは大いに気に掛かるところです。  了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント2件

 大藏八郞 | 2023.10.02 8:18

癸卯秋腰折五首

〽幕末史遥か後ろを辿りつつ御長寿祈念野口先生

〽曼珠沙華ことしも咲けり北国分約を違えぬ律義者かな
〽トリレンマ我が身も同じ貧しくて名もなく老いる死にたくもなし
〽我が心なぐさめかねつと詠みませし古人の思い老いのわが身に
〽鏡にて顔馴染みなるこのおやじ迂闊に過ぎて年ばかり寄る

 後藤 進五 | 2023.11.22 8:51

私は二十歳だった。「三島由紀夫の世界」を買ったのは1968年のこと。磯田光一や橋川文三の三島論の秀作の初出は、野口氏のあとの事だ。それから34年後、2002年初出「近代日本の詩と史実」は、野口氏の最高傑作である。見事な口切り、独特の発想、鋭敏な解析、評論家でなく化学研究者であった。「江戸人の精神絵図」は、武士の内景と江戸文学光と闇だが、松崎こう堂の偉大さを知る。
 閑話休題、最近村上一郎の「悲命の維新者」再読す。大塩平八郎・橋本佐内・藤田幽谷・東湖・藤田小四郎・真木和泉守
・佐久良東雄・伴林光平・雲井達雄。 平八郎と三島をなぞらえる研究者もいる。表層こそ異なるが、三島由紀夫は意に反したのに違いないのだが、かの毛細血管において確かに昭和まで切断されていなかったのだ。

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