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タイガーキャットの祝祭と受難

阪神タイガースの優勝で関西が沸き立っている。町を歩人々にもユニフォーム姿がまじり、商店では特別セールが始まり、ちょっとした祝典気分だ。大道をトラキチが闊歩し、ネコまでがトラにあやかっている。

二つの世紀にまたがるこの38年間というもの、このチームはリーグの下位に甘んじ、人々の上から目線に耐えてきたわけだ。その屈従からいっぺんに解放されたのだから、嬉しさのあまり、道頓堀に次々と飛び込む若者たちの行列ができたのもわかる。

ところでこの低迷の38年間、主として阪神間の地域で、一つの都市伝説が広まったことを御存知だろうか:  いつもテレビの野球中継の始まりを告げるテーマ音楽が鳴り響くや否や、そこらじゅうのネコが一斉に姿を消すのだそうだ。みな押入れやら縁の下やら物蔭にこそこそ隠れ、身を潜めていたというのである。タイガースが負ける度に飼い主が腹を立て、身近な飼い猫に当たり散らす――頭を叩く、尻尾を引っ張る、毛皮をこねくり回す、と散々な目に会うのを逃れるためなのだそうだ。とんだ災難である。

ではタイガースが勝ったらどうなるのか。同じことである。人間様は万々歳だろうが、ネコにとってはやっぱり受難の続きにすぎない。ネコはトラの仲間だと決めてかかり、戦勝をネコの身体で祝わせようとするのだ。いやがるネコに野球帽をかぶせる。猫背をまっすぐに引き伸ばしてバンザイをさせる。無理矢理握手を求める。祝祭と見えるが、じつは受難なのである。

それはさて置き、話は違うが、この度のタイガース優勝は、わが老宅には概して好ましい結果をもたらしている。わが老躯の介護に来てくれるヘルパーさん、トレイナーさんたちはいずれも?0年台の妙齢女性だが。土地柄でみなタイガースファンである。中には自称尼ヶ崎生まれという人もいる。

これらの人々がここ当分朗らかそうなのが有難い。来年はどうなるか、タイガース優勝がいつまで続くかどうかまでは分からないが、せめてわが天寿くらいの歳月は全盛期であってほしいところだ。 畢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント1件

 里女 | 2023.11.07 15:56

わたくし10歳の時でした、バースに惚れ込んではや38年……そんな都市伝説があったとは。
ともあれクライマックス面白かったです、オリックスも強かったし!また来年楽しみです(o^^o)

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