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『時空旅人』vol.27の御恵送に感謝

御談話掲載の『時空旅人』を御恵送下さいまして有難うございました。御苦労なさったことと拝察しながら読ませて頂きました。拙生にも経験がありますが、あらかじめ成案を持っていて我の強い編集者を相手にするのは、なかなか気骨の折れるお仕事だったろうと存じます。学兄の言葉が「引用」あるいは「要約」されているカギカッコの部分にはいくつかかなり勝手な、編集者流の我田引水があるように見受けられます。

この雑誌の特集が「無惨絵」であることは、彰義隊に対する学兄と同誌編集部との微妙なスタンスのすれちがいを集約しているように思います。ことさらに異和をかきたてるつもりはありませんが、『時空旅人』誌がめざすところは歴史のスペクタクルの一画面、一齣、つきつめればヴィジュアル・グラフィックスであり、それが現今読書人の「歴史好き」志向と一致しているからのように感じられます。彰義隊は過去時制で完結した歴史場面にすぎないのです。その点、彰義隊はまだ歴史的過去に埋もれきってはおらず、将来に向かっても何らかの布石たり得るポテンシャルを蔵している――とおそらくはお考えの――学兄とは一線を画するのではないか。

ところで、本誌の誌面で、初めて御近影を拝見致しました。さすがは直参旗本の御末裔、みごとな「殿様顔」に感服することしきり。今後も何卒よしなに。謝妄言。

コメント1件

 大藏八郞 | 2023.11.25 14:30

野口武彦先生

『時空旅人』はこれまで迂闊に知りませんでしたが、隔月の発売で11月号は「陰陽師と古代暦の世界」、9月号は「四国遍路―弘法大師空海よ永遠に」といった具合に、本格的な歴史雑誌で内容が充実しています。原田伊織氏が本誌に興味深い「徳川近代」を連載していることも知りませんでしたが、記事内容は小生が来月上梓する『彰義隊士の手紙』の天野八郎の条で採りあげる一部の内容と偶然一致します。

編集者から上野でのインタビューのお声がかかったのが10月で、彰義隊を紹介して下さるというので喜んで応じました。出来上がったゲラに注文を付ける機会もあり、その結果が明日(11月26日)発売となるこの来年1月号(vol.77)でした。企画の意図が「芳年の異色作「無惨絵」を切り口として「人間の怖いもの見たさ」という深層心理を見つめるとともに、最後の浮世絵師の輝きに迫る」であったことも事前に承知していました。 月岡芳年は、上野戦争の翌日に弟子を連れて凄惨な戦死者の亡骸を素描して歩き、それが原因で神経を病み暫く画業から遠ざかったと伝えられますが、本誌が今回テーマとした「魁題百撰相」こそがその時の作品群で、タイトルは「無惨絵」ですが、芳年の無惨絵はすなわち彰義隊が対象ですので、そっくり彰義隊がテーマであり、この企画は画期的で素晴らしかったと思います。近年のメディアで彰義隊の側に立った記述は珍しく、以下の全てに言及してくれたのは初めてと思われます。

1. 上野戦争で先に攻撃したのは西軍
2. 彰義隊が簡単に敗北したのではなく正午までは優勢で、善戦だった
3. 半日で敗北したのではなく、夕刻まで戦闘が続いた
4. 彰義隊の真の敗因に言及した

以上の前置きがないと野口先生の以下のコメントの深い意味が理解不可能と思います。「学兄」には身の縮む思いですが。 「この雑誌の特集が「無惨絵」であることは、彰義隊に対する学兄と同誌編集部との微妙なスタンスのすれちがいを集約している・・・『時空旅人』誌がめざすところは・・・・つきつめればヴィジュアル・グラフィックスであり、それが現今読書人の「歴史好き」志向と一致しているからのように感じられ・・・・・「彰義隊はまだ歴史的過去に埋もれきってはおらず、将来に向かっても何らかの布石たり得るポテンシャルを蔵している」――とおそらくはお考えの学兄とは一線を画するのではないか」

これが今回の愚生の感じた違和感、うまく言葉に表現できなかった思いを言い尽くして下さっています。誠に有難く感じておりますが、ここで始めの私見にもどれば、このスタンスの違いにも関わらず、普段世間から見捨てられてきた彰義隊を、月岡芳年を介してよくぞ採りあげてくれた、しかも愚生の意見を殆ど聞かなかった2年前の某テレビ局の「江戸散歩」番組とは異なり、可成り正しく記述してくれたという感謝の気持ちが勝っております。 また今回の編集者は、あらかじめ成案を持っていたと云うよりも、素直に「殿様」の意見を容れるタイプの方でしたので、「上野―彰義隊の足跡を訪ねて(p70-77)」に関する限りは編集者流の我田引水はなく、そのように見受けられるとすれば、それは愚生自身の噺に責任があります。

おおくらのプロフィールになど添えられた老いの写真を殿様顔と
〽写真師の振り付けしまま気取りしが冷やかされし身の耻かしきかな

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